FUSION 多摩ニュータウン学基礎講座 - 住区センターと地区センター

基礎講座 第5講

住区センターと地区センター


 多摩ニュータウンの商業施設については,3つの階層に計画的に配置されていま す.まず,第4講で述べた「近隣住区」には「住区センター」(近隣センター)として日常 生活に必要な施設として,日用品店舗,スーパー,郵便局,診療所などが設けられてい ます.

次に,住区をいくつか集めて「地区」が構成されます.永山駅と南大沢駅のように 駅を中心にした「地区センター」(駅前センター)があり,買周り品を中心に専門店,娯 楽施設や銀行など都市的サービス施設が配置されています.さらに,多摩ニュータウンの 中心地としての多摩センターは「中央センター」(都市センター)と位置づけられ,デ パート,大型スーパー,ホテル,警察,郵便局及びパルテノン多摩のような文化施設が立地 されています.このよう,毎日の最寄品は「住区センター」で済ませ,週に一回程度「地 区センター」に買い物に行き,たまに「中央センター」に買い物によくことを想定してい ました.

 ところが,商業を巡る環境は近年にわかに変化を遂げました.大きな変化は「住 区センター」の衰退です.平成9年の時点で,12の住区商店街の214店舗中33店舗が空き店 舗となっています.特に,諏訪・永山の住区センターや鹿島住区センターなどでは空店 舗が目立ちます.もう一つの顕著な変化は,ニュータウン通り沿いの「ロードサイド商業 地区」の賑わいです.この点については多言を要しないでしょう.結果として,当初計画 されていた商業環境がドラッティックに変化しています.

 それでは,「住区センター」衰退の原因はどこにあるのでしょうか.生活スタイ ルの変化とともに,その成り立ちと深い関わりがあるといえます.住区センターの小売店 舗は,この地域で農業を営んできた方への生活再建という意味で優先的に出店されまし た.そのため「1業種1店舗」と店舗間の競争が押さえられました.さらには,住区センター には徒歩でくることを想定しているために,初期に作られた所には駐車場スペースがほと んどありません.結果として,日常品まで駅前の「地区センター」の大型スーパーで買い 物を済ませたり,週に一回車で「中央センター」に買い物をするなど,現実の消費行動 は,当初の計画された行動とは異なるものとなってきました.

それでは,駅前やロードサイドの大型ショッピングセンターだけあれば私たちの 生活はそれでよいのでしょうか.わたしは,今こそ「住区センター」のコミュニティ活動 の拠点としての再生(ルネサンス)が,逆に必要だと考えます.調査でも,「日用品の買 い物がより便利にできる住民に密着した買い物の場」を住区センターに求める人が8割もい ます.さらに,新たなライフスタイルに対応したサービスを提供する店舗や人々が交 流しあう,サークル活動やボランティア,NPOの活動の拠点などを設置することも考え られるのではないでしょうか.また,少子・高齢化の時代に突入してゆく現在,高齢者対 応サービスの機能も身近な「住区センター」に求められているのではないでしょうか.私た ちのコミュニティの活動の拠点としての「住区センター」を作り上げてゆきたいもので す.

(蓮生寺公園通り一番街 炭谷 晃男