FUSION 多摩ニュータウン学基礎講座 - 新住区域と区画整理区域

基礎講座 第4講

新住区域と区画整理区域


 多摩ニュータウンは2種類の開発手法によってつくられています.丘の上の中・ 高層集合住宅地が「新住区域」で,丘の下の谷戸と呼ばれた幹線道路沿いの平地 部分が「区画整理区域」です.それぞれの区域は,新住宅市街地開発法(新住 法)と土地区画整理法という別々の法律に基づき整備されたものです.新住区域 は多摩ニュータウンの78%を占め,区画整理区域は22%を占めています.前回第3 講で述べました「近隣住区」の手法が導入されているのは,この新住区域です.

 昭和30年代当時の新市街地の開発手法としては、土地区画整理事業と一団地住 宅経営事業が一般的でしたが、それぞれに難点があり,大規模な宅地開発に適し た新たな手法が望まれていました.1963年に「健全な住宅市街地の開発及び住宅 に困窮する国民のための居住環境の良好な住宅地の大規模な供給」を図ることを 目的とする「新注法」が成立しました.この法律は,土地の強制収容権をもち, しかも一住区1万人以上の大規模な住宅団地を想定したものでした.早速この法 律は千里ニュータウンの開発に適用されることになりました.

多摩ニュータウン開発が1965年12月に都市計画事業決定されたのは,全域が新 住法に基づくものでした.しかし,その後,多摩ニュータウン開発の全容が明ら かにされると,旧来そこに暮らし生活を営んでいた人々は,ニュータウン開発に 不安を抱くようになり,反対の姿勢を示すようになりました.そこで,区域全体 を新住事業で行うのではなく,谷戸部の既存集落及び田畑の部分は,区画整理事 業として,旧来の土地の地権者が代替え地として居住し,店を開き生計が立てら れるような方式が導入されることになりました.

 新住区域は確かに良質な住宅地を形成してはいますが,街角のしゃれたお店は 出来なく,人間味のある自由さと活発さに欠けます.それに対して,区画整理区 域は,幹線道路沿いということもあり,ロードサイドショップが建ち並び,バイ パス風景を呈しています.また,いわゆる新住民と旧住民という人々が別々の区 域に住むようにもなってしまいました.今後は,新住区域に多少の自由さ,区画 整理区域に住民の意見を反映させる仕組みなど新たな手法が望まれます.

 千葉ニュータウンは新住事業によって行われ,港北ニュータウンは土地区画整 理事業によって行われています.このように,新住事業と区画整理事業の二刀流 の開発は多摩ニュータウン開発の特徴ともなっています.

(蓮生寺公園通り一番街 炭谷 晃男