FUSION 多摩ニュータウン学基礎講座 - 多摩地域広域都市の競争と連携

基礎講座 第10講

多摩地域広域都市の競争と連携
多摩都市モノレール


多摩地域の交通は鉄道も幹線道路もほとんどが都心に向かって放射状に整備をされていま す。多摩地域の南北公共交通路は長年の課題でした。多摩都市モノレールは、本年1月多摩セ ンターから立川を経由して上北台までつながりました。多摩地域に南北16キロの動脈が完成し たことは画期的なことです。しかし、1日の想定乗車人数は11万人に対して、実際はその半分 程度に留まり苦戦を強いられています。

昨年、沿線住民の方々にアンケートを実施しました。立川と多摩センターの都市評価の結果 は図のように、「近代的」と「暮らし易さ」という点は多摩センターの方が優れている反面、 「庶民的」、「にぎわい」、「買い物」については立川の方が優れているという結果となりま した。しかも、モノレールのプラス効果は立川の方が、マイナス効果は多摩センターの方がそ れぞれ上回っていたことは大変気がかりです。

[図] 多摩センターと立川の都市イメージ

モノレールの影響について二つの異なった側面から考えてみましょう。一つ目は都市間競争 です。各都市が個性をいかした街づくりに取り組み、沿線住民にとって多様なサービスを享受 できる反面、不安な面もあります。企業の支社、支店が立川に移りつつあります。二つ目は、 モノレールを通じて広域都市圏の萌芽が胚胎したことです。立川市16万人、日野市16万人、多 摩市14万人の合計46万人の潜在的広域都市圏の誕生です。そのためには、行政間の連携や各地 域に散在する人的資源、商工会議所、農協、大学等様々な機関・施設のネットワークづくりが 必要不可欠となります。さらに、一つの都市圏として自立するために必要なことは働く場の確 保です。SOHOのような新しい情報産業形態をどのように根付かせてゆけるかがキーポイントい なります。TNTの問題を考えるとき、広く周辺地域との連携、競争といった広域的にまちづ くりを考える視点が必要となります。モノレールをどう利用してゆくのか、その知恵が各地域 で試されることになります。

(今回で基礎講座の第1部を終了します。次回からは由木村を築 いてきた「人」に焦点を当てた連載を構想しています。)

(蓮生寺公園通り一番街 炭谷 晃男